「円周率が歩んだ道(上野健爾著:岩波書店)」

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前回が、数学の話だったので、今回も数学でいきましょう!

この本は。

私の高校時代の同級生が著した、円周率を中心とした数学の世界史とでもいうべき本です。

どの章から、どんな順番で読んでも構わないし、数学専攻のプロにも、一般の人にも興味深く読める、読者に優しい本です。


図形や数式の詳細は、気にせず実に楽しく読めます。

気軽に、記憶に残った点のみ、摘み食いしてメモしておきましょう。


☆円周率が歩んだ道メモ☆

・昔から国家権力の正統性を保証するものの一つが、暦だった。

・暦を作るには天文学が必要。天文学には数学が必要だった。


・円周率の計算を厳密に行ったのは、B・C3世紀のアルキメデスが最初。

・アルキメデスは、円の内外接多角形の角を増やしていき円周率を求めた。


・古代ギリシャでは、極限という概念を数学に持ち込む事には慎重であった。

・円から円周率、円弧や弦から三角関数が導かれ、互いに深い関係にある。

・古代ギリシャの弦の表→インドの三角法→アラビア→近代欧州と伝わった。


・インドでは、円周率としてルート10を使っていた。

・インドでは、紙が高価なので数式を砂に書くか覚えやすく詩の形で残した。


・インドには、ラマヌジャンという大天才が現れ、数学を驚異的に発展させた。

・ラマヌジャンは、32才で夭折、あと30年も生きておれば、と惜しまれる。


・デカルトにより数式に記号が導入され、数学の発展に大きく寄与した。

・デカルトの功績:三角関数の進展、座標の導入、幾何学と代数学の統合。


ニュートンライプニッツは、微分積分学への道を開いた。

・円周率計算が決定的に発展したのは、微分積分学の誕生による。

・微分積分学は、古代ギリシャが避けてきた極限という概念を扱う事だった。


・江戸時代の村松秀清は、円周率を小数以下7位まで求めた。

・村松秀清の娘婿は、赤穂浪士47士のうちの一人である。


・江戸時代の大天才の関孝和は、円周率を小数点以下15桁まで求めた。

関孝和は、微分積分、行列式を発見し、傍書法を考案した。

・関孝和の傍書法により多変数高次方程式を解く事が可能になった。


・関孝和は、独学でニュートン、ライプニッツに並ぶレベルに到達していた。

・関孝和の弟子である建部賢弘は、円周率を小数点以下40桁まで求めた。


・円周率の計算は、現代のスーパー・コンピュータでも膨大な時間がかかる。

・昔から円周率計算の加速法につき、いろいろな工夫がされてきている。


・微分積分学の応用で、円周率計算の基礎を築いたのは、マチンだった。

・2000年にはマチンの公式を踏まえ、円周率を1兆2,441億桁まで算出された。

・現代では、円周率は円以外にも、数学上で重要な意味を持っている。


・16進法の1~15は、123456789ABCDEFであらわされる。

・πは16進法なら上から順番でなくても小数点以下任意の桁の数字が分かる。


・現代の円周率研究には、複素数が決定的な役割を果たすらしい。

・非ユークリッド幾何学は、時空が歪んでいるとした理論である。

・非ユークリッド幾何学だと、円周と直径の比は、直径によって変わる。


・数学を含め、異なる文明の出会いが文化の発展を促す事が多い。

(古代ギリシャ文明とオリエント文明、イスラム文化とヨーロッパ文化)

・数学に於ては、何ら前触れも無く、大天才が忽然とあらわれる事がある。

(インドのラマヌジャンがそう、江戸時代の関孝和がそう)

本の最後に「付録」として、「円周率は無限小数であり、ある小数点以下から同じ数字の列が繰り返す循環小数でない事を背理法で証明している」とあった。


☆総括☆

この本は、古代ギリシャから始めて、非ユークリッド幾何学一般相対性理論にまで至る数学の歴史を実に興味深く著している。

我々、非ユークリッド幾何学などは、感覚的にピンと来ないが。

曰く。

「一般相対性理論では、大きな質量がある空間では空間が歪んでいる。地球は空間が歪んでいるとは知覚できないほど平坦であり、ユークリッド幾何学が極めてよい精度で成立しているため、ユークリッド幾何学を当たり前と思っているだけだ。当たり前と思っていることが、当たり前でなく、それを説明するために高度な数学が必要になる」と。


素人の私などには、細かい事は、とても理解できないのですが、普段は考えもしない不思議な世界に誘われる、非常に興味深い本でした。

ついでに。
著者の上野健爾君は、数学者になりましたが、彼が高校3年生の時に話していた言葉を思い出しました。
数学を極めようとするなら、文学もやらなくてはいけない
そして、彼はドイツ文学をかなり読みふけっていたようです。
当時、私は数学と文学とどう関係するのかな?と不思議に思っていましたが。
今は、何となく理解できるような気がします。

この記事へのコメント

2019年07月22日 18:25
こんばんは。お恥ずかしい事に私は小さい頃から数字には弱く、数学は普通でした。全然お金の勘定もダメ~なぜなのでしょうね。文字には昔から強く、小学校の時から図書委員をしていました。(自慢にもならないことですが)
今はますます。数字がわからなくなり~こまっています。でも普通の計算はできます~♫
2019年07月22日 19:26
皆、好き好きというか、得て不得てがありますよね。
中学の頃に女の数学の先生が、「私は数学が好きです。何故なら答が1つでしょ。だから好きなんです」と言っていました。
しかし国語の授業などでは、「同じ話でも聞き手によっていろんな解釈ができる。
そこが、面白い」と感ずる事もあります。
これも好き好きですね。
因みに。
私の一番の苦手は、飲み会の後の金の精算です。「誰が誰に払って、残りを誰が取るか」とか、あれが苦手です。やはり理系の頭ではないのでしょうかね。
2019年07月22日 21:11
こんばんは~
円周率・・数学が苦手だった私。
苦手より怠けていたのでしょうね。
今になって後悔してもダメ。
勉強はできる時きっちりする事の
大切さを感じています。
いつもありがとうございます。
2019年07月22日 22:57
勉学を強いると書くくらいだから、強制されないと、なかなか出来ないのが勉強ですよね。
リタイアーして、どうでも良くなった時期になって、不思議とやってみようかという気になります。
でも、やるべき時に何でもやっておくべきですよね。
若い時は、吸収力が全然違いますから。
つくずくそう思います。
2019年07月23日 09:17
こんにちは。

円周率ですか。
覚えたなぁ。
でもそれしか覚えてないです。
アルキメデスといえば、今週末から映画「アルキメデスの大戦」が公開されますね。
2019年07月23日 09:28
円周率を何千桁も覚えたという人もいますよね。
どこまで行ってもキリがない、不思議な数字ですね。
ゆとり学習で、円周率を3と教えたなんて話も聞きました。

映画「アルキメデス・・・」26日からだったかな。
当然、観に行くつもりです。
2019年07月23日 11:42
こんにちは。

気持玉です

円周率と数学の世界史は興味深い内容ですね。面白い本だと思います。インドのラマヌジャンは閃きで難解な数式を沢山考案した、天才的な才能の持ち主ですね。おっしゃる様にどの分野でも道を極める人は、努力と共に広い学識があると思います。
2019年07月23日 12:40
「気持ち玉」と「コメント」ありがとうございました。
大変、興味深く面白い本でした。

「数学を極めるには、文学も」というのは、当時は分からなかったのですが、やはり高い山は、裾野も広いという事だと思います。
年がら年中、数学ばかりやっていても、発想に限界があるのでしょう。

数学と文学は、人間の脳の深いところで繋がっているのかも知れませんね。